2014年1月31日金曜日

擬音418

擬音シリーズ「思ひ出(縛り煙収録)」から「指紋(汁菌糸収録)」までの418本を1冊のマガジンにまとめました。
単品なら110円×418本=45980円となるところを、29999円で販売いたします。
購入はnoteで→擬音418

2014年1月13日月曜日

汁菌糸


特殊な文章を11本収録。
「鳥」「司会」「質感」「体育館」「フケ」「ヒマワリ」「野球帽」「ロボット」「朝食」「カクテル」「指紋」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→汁菌糸

 抜粋作品:鳥

  左遷先ではネクスト大臣という役職に就いた。家の壁にスプレーで「ネクスト大臣」と吹きつけられていた。社内では大臣ではなく、ネクストと省略されて呼ばれている。ネクスト、確認お願いします。確認してもしなくてもいいものを確認する。マキグソとかスネ夫の落書き持ってくるんだぜ。それ、真面目な顔で確認するわけよ。Facebookにネクスト大臣就任って書くかどうか迷っている。会社名だけでいいか。でも大臣だから誇示してみたい、そんな思いもある。若いのが左遷されてきてネクスト副大臣になった。貧相で青白く、死んだ野菜のような男だ。俺に似ている。Wネクストと呼ばれるようになった。囲碁や将棋はやるのかね?食堂でネクスト副大臣に尋ねた。そういうものはやらないのだという。その代わりマリモを育てているらしい。「ほう」と感心すると、「楽しいですよ、でもね」ネクスト副大臣は持参したストローでカップのコーヒーをズルズルと飲み干してから続ける「生きてるのか死んでるのかわからんのです、だけどいずれ巨大化することを信じて眺めてるんですよ」。俺とネクスト副大臣の食堂での会談は盗撮されており匿名のTwitterで拡散された。社屋のどこかに匿名Twitterの主がいるのだ。俺とネクスト副大臣は背中合わせに立ち、鋭い目で社内を見渡す。だからといって何ができるわけでもなく、日経新聞を読んでやり過ごす。ネクスト副大臣のマリモに賭けるしかない。あれが巨大化すれば、何かが変わる。ガスタンクより大きくなったマリモを夢想する。申し訳ないネクスト副大臣、君は寝ている間に押しつぶされるんだ。だからマリモはネクスト大臣である私の管理下に置かれる。ガスタンクより大きいマリモが俺のものだ。俺はネクスト副大臣の墓参りをしてからビル群の中でゴロリと座るマリモを眺める。さらに大きくなるんだ、頼むぞ。ギュッと拳を握りしめたところで夢想から目覚め我に返る。ふとネクスト副大臣を見ると、座ったまま耳から血を流して、本当に死んでいた。

(了)

爬虫型


特殊な文章を11本収録。
「浴槽」「制服」「雲」「屏風」「定価」「地元」「駄作」「トイカメラ」「青」「ねじれ」「少女」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
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 抜粋作品:浴槽

  毒ガスで風船を膨らませて、小学校の前で配る。家の水槽でサソリを飼っている。Yahoo!知恵袋でルミノール反応の消し方を聞く。そこそこの大学で就職先も吟味したのでブラック企業に入ることなく余暇を豊かに過ごしている。土手も歩く。晴天の青空をじっと眺めていると不安になって引きつった顔で笑ってしまい、バケツで様々な毒物を混ぜ合わせてしまう。子供達がビニールプールで遊んでいるような真昼の住宅街で。栗のいがのようなものを抱えて生きる。栗のいがのせいで心がスムーズに流れない。強力な溶剤を飲み干したくなる。曲がりくねった松のように晴天の空に向かって己を伸ばす。グニャグニャと引きつった笑顔で成長の悦楽に溺れよだれを垂らしながら上昇するのだ。正月にはあんぐりと口を開け長い長いムカデをズルズルと引きずり出す。この日の為に腹の中で飼い慣らしてきたムカデよ。福利厚生の充実したヤンキー上がりなどがいない職場でデスクワークに励みながらムカデもまたそこにいたのである。時折腹を撫で回し、ノートパソコンで無味乾燥な資料を作成する。どうしたんですか?なんて同じようにそこそこの大学を出た同僚に尋ねられれば、いや小腹が空いてね、なんて無味乾燥な返答を笑顔で返すのである。引きつらずとも笑顔が作れるというのに、晴天の青空の前ではそうはいかない。毎年引きずり出すムカデは長くなってゆく。体内がムカデに適応し、効率的に養分を送り込むようになっている。定年前には尻からこぼれる程のスピードで成長するようになっているのではないのだろうか。とても不安である。住宅ローンよりも不安である。夜中の住宅街では、怒鳴り声の聞こえる家などもあり、それなりに暴力の気配を感じ取れる。DVはワイドショーと現実の日常を繋ぐ架け橋だ。DVによってテレビの世界が私達の現実と地続きであることを教えてくれる。福利厚生の充実した職場の柔和な同僚や上司からも暴力が感じ取れるだろうか。誰が誰を殴っているかなんてわからない。今度上司の拳の匂いでも嗅いでみようかと思う。無論強引にそんなことはしない。適当な健康診断の話題などをでっち上げて拳を作らせ、了解を得た上で嗅ぐのだ。血の匂いがするだろうか。それでも自然な笑顔で、大丈夫みたいですね、とか答えておこう。

(了)

鼻蟲


特殊な文章を11本収録。
「棒」「工業用」「拡声器」「暗殺」「衆」「深夜ラジオ」「通販」「折れ線」「gif」「部数」「傀儡」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→鼻蟲

 抜粋作品:棒

  整列!前へならえ!右傾化!ボヘミアン的生活!一年中麦わら帽子で過ごす。こんな都会のコンクリートジャングルで。麦わら帽子が風に飛ばされてもすぐにビルディングにぶつかってしまうじゃないか。銀座は未だに栄えている。銀座の滅亡を願っている。電気屋のテレビでプロレスを観ていた。だから血には慣れていた。戦場でも心に傷を負うことなく、平常心で敵を殺戮した。野球の用語も全て日本語にするべきだと学級会で提案した少年は平成の大地で何を思う。米帝によってもたらされた繁栄の下で何故にそんな野球をする必要があるんダニ?楽天の社員にFUCKと言ってやった。日本人にとってのFUCKと英語圏の人間にとってのそれは衝撃が違う。FUCKに対してどのような反応を示すのか?沖縄の次は楽天なのだ。楽天には核ミサイルを積んだ船が停留している。まことしやかに囁かれ、政治家たちは楽天返還に尽力するのである。三木谷が倒れても四木谷が控えており、さらに五木谷もいるのである。米帝の支配は終わらないのだ。しかし米帝が飽きたら終わりだ。連日のように続く米帝鍋は米帝次第なのである。MBAを取って鍋奉行にまで昇りつめた。鍋奉行として悪を裁きたい。外資の鍋奉行である。タジン鍋の、である。ハンモックで寝ている。欧化も極まった。森林浴で金玉まで洗う。穴という穴を磨き上げる。美容院で床屋政談。ナチュラルに流して総選挙ツーブロックツーブロック過半数。シャギって自公。ぶっきらぼうな優しさを強調しながら会見する新首相。戦略ではなくスタイリング。政権のスタイリング。普通で、普通でいいです。中韓への対応も普通で、普通でいいです。今までずっと普通でやってきた。ナチュラルに流したり、ウルフったりして良かったためしがない。水前寺清子みたいにしてください。は?あ、普通でいいです。楽天の支配する世界で、TOEICの猛者相手にどんな風に髪型を注文すればいいんだ、この俺は。

(了)

練昆虫


特殊な文章を11本収録。
「草」「無線」「セル」「封筒」「ベストセラー」「実録」「上下」「シーレーン」「歯磨き粉」「白黒」「サソリ」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→練昆虫

  抜粋作品:草

   亀を助け、サイバーエージェントの内定式へ連れてゆかれる。戻ってきて、どっと疲れを感じ、玉手箱を開けずとも急激に老けこむ。グルーポンのおせちを眺め、ODAの必要性を思う。戦争の傷跡、破壊された都市、上空からグルーポンのおせちのように見える。ジャンピングシューズを履いた鳩山由紀夫が世界へと飛び立ってゆく。滑走路を飛び跳ねながら高く高く上昇し、雲を突き抜け、異国の地へと降下するのだ。パッチンガムをオバマへ差し出したあの時、オバマは手を押さえ中指を立てて怒る。「ファック!」。「ファック言うもんがファック」。ケケケケケ。鳩山は怪鳥のような笑い声を上げながらジャンピングシューズによる跳躍でホワイトハウスの窓を突き破り姿を消した。ボーン・アイデンティティーのテーマ曲にのせて、太平洋を深く潜り、潜水艦の下をくぐり抜ける。マッコウクジラや巨大イカとすれ違う。鳩山は肉体の呪縛から逃れ、個体としてではなく、巨大な概念として世界を君臨する。全ての雨雲とその豪雨は鳩山の悲しみであり、激しい雷は鳩山の怒りである。巨大な隕石が衝突し、鳩山が発生した。鳩山は6日間出勤し、7日目に休んだ。有給で女体に似せた大根を作った。無断で休んだらオーナーに殴られた。グループのオーナーは半分ヤクザ者だった。泣き寝入りするしかなかった。生まれ変わるなら頂点捕食者になりたい。頂点捕食者同士来世で再び愛し合おう。頂点捕食者ばかりを集めた動物ビスケットを食べている。だいぶ強くなった気がする。毎朝太極拳を行い、獲物としての社会を眺める。莫大な資産の上で、鳩山は食物連鎖の風景を優雅に見下ろす。バサバサと飛び立ち、プロメテウスの肝臓をついばむ。太極拳の男が広場でライフルを発射する。家族連れが倒れる。ヒトが一番強い。ヒトは火を扱い、武器を持つ。俺はヒトだ。ライフルを持ち、俺は神に近づく。サスペンス映画でヒトの怖ろしさを知る。結局ヒトが一番怖いってことですね。コメンテーターがズバリと言うのだ。一番怖いのはスポンサーと大手芸能プロダクションだろうが。煎餅をかじりながら毒づいた。破損した原子力発電所の上空をハゲタカが旋回している。東京電力と経産省がバーニングプロダクションの傘下に入り、あらゆる批判は封じられた。個人事務所のチンピラタレントばかりが原発に括りつけられ、ハゲタカの攻撃に晒されるのである。

(了)

吊異界


特殊な文章を11本収録。
「鯉」「早足」「無痛」「親指」「ドイツ」「事故」「定番」「動画」「焼きそば」「毛穴」「自治」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→吊異界

  抜粋作品:鯉

   豚のような夫婦に売り飛ばされた千尋は、熱海のエロ宿でピンクコンパニオンとして働いている。極上の未成年だったので突出した人気ですぐに稼ぎは増え、妬んだ他のピンクコンパニオンからは千尋ではなく、「せんずり」という蔑称で呼ばれていた。やり手婆婆のツバメとして囲われていた未成年ホストの「吐く」は金と生活の為にプライドをかなぐり捨て性奴として奉仕する日々であった。ある日、金を持った男を篭絡する為に整形を繰り返し、それによって顔面崩壊したカオイジリがエロ宿に現れる。カオイジリは千尋の稼ぎに関心を持ち、これを利用すべくおいしい話を差し出すのであった。が、過酷さの中で既に他人を信用する人格ではなくなっていた千尋は酒焼けした声でそれを拒絶した。希望を失ったカオイジリは付近の酒場で知り合ったヤクザに思いの丈を全て吐き出し、資産家と称する婆婆の家に連れてゆかれる。そのままカオイジリの消息は不明であったが天涯孤独の為、捜す者はいなかった。「北朝鮮にでも連れていかれたんでねえか、それともぬっ殺されて、内臓売られたんだべ、うひゃひゃ」やりて婆婆は吐き捨てるように言って笑い、「吐く」は性奴として頷くのであった。「吐く」はカオイジリ同様、千尋に新たな商売の可能性を感じ取っていた為、当初より協力的であった。千尋もまた「吐く」の思惑を感づきながらもエロ宿での立ち回りに彼を利用した。昔から「吐く」のような男は千尋の前を繰り返し現れ通り過ぎていった。皆、同じような屑であった。エロ宿を訪れる男たちに弄ばれ金を稼ぎ、それを目当てに「吐く」のような屑が次々と寄ってくる。生まれてからずっと、どうしようもないドブ川でのたうち回っているのだ。わずかに許された休憩の間、千尋は宿を抜け出し人生の抜け殻としてたくましく生きる己を引きずりながら温泉街を歩いている。橋の欄干から川の流れをじっと眺める。煙草を咥え火をつける。長い溜息と共に煙を吐き出す。曇り空の向こう側で柔らかい太陽の光が滲んでいる。暖かくもなく、肌寒くもなく。千尋は再び煙草を深く吸い込み、ゆっくりと煙を吐き出す。ふぅっと吐き出しているその時だけ、人間に戻れるような気がするのだ。

(了)

硬質花


特殊な文章を11本収録。
「麦」「徳利」「冷夏」「量販店」「ボール」「痣」「技術革新」「別冊」「寄宿舎」「アンコウ」「不振」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→硬質花

  抜粋作品:麦

   今日もめかぶ、明日もめかぶ、明後日もめかぶ、芋虫のような指で数え、ポテチの油でぬらりと光る唇を微かに舐める。思えばネチネチとネチネチと様々な学年で学級委員長をやってきたなあ。一般職OLに雑巾の絞り汁を飲まされてもいいように胃袋も鍛え、可愛げのない奴だと熱血教師に腹の底で秘かに嫌われても、虫のような顔でやり過ごす。全ての受話器はクレームをつける為にあるのだと、現代の至言を独りごち、岩波文庫に収録されるつもりで丹念に相手の落ち度を問い詰めるのだ。あああ、こんな自由主義社会はつまらない、警察国家になれば朝昼晩密告を繰り返すのにな、オイコラ警察、路上でハードカバーの本を渡すあれは怪しいですよ、コードネームX、獄、ワライ。頑張って頑張って教室で夕日を浴びながらペンを滑らし国立大学に入ることができたのだ。官吏になって外套を着たい、その一心で知識階級としての一歩を踏み出すのである。外套を壁に掛け、ボルシチをズルズルと飲み干し身体を温める。陰気な顔の一般職OLとマグカップを持ったまま陰気な眼差しで意気投合し、名画座で並んで座り古い映画を眺めるのだ。凍えた太陽の日差しによって、それが新しい生活の合図であるかのように、ネチネチとしたコラムを書き始める。馬鹿丁寧に事態を説明し、それにより事態の愚かさを際立たせ、大げさに褒め称え、言外に侮辱してみせる。ジメジメとした地帯に生える茸のように生まれ落ちたい、その希望が筆の力で叶えられるかもしれない。ボルシチを飲まずとも身体が熱くなり、粘液のようなもので心が満たされる。みなぎる活力で裏庭のゼンマイを全て刈り取り、思わず納屋で放置されていた樽の中に入ってしまった。こんなことをしてしまうとは。興奮していた。闇の中で濁った眼を見開く。人々のほんの些細なことが点と点を結び、侮蔑と嘲笑の対象として姿を現してくるのだ。無限にコラムが書けそうだった。足に絡みつく蔦のように文章を連ねるのだ。低い笑い声が裏庭から流れ、錆びたドラム缶などを通過し、寒空に溶けてゆくのだった。

(了)

皮箱竜


特殊な文章を11本収録。
「宝石」「冊子」「OS」「カード」「レジ」「踏襲」「錠剤」「劇場」「無限」「洞窟」「会見」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→皮箱竜

  抜粋作品:宝石

   助平な古典を読んでしまう。詰襟学生服でいやらしい海外文学を買った。自分、文学が好きなだけですから。ポルノショップのデブと親しくなった。ロックがきっかけだ。品行方正であってもロックは聴く。ロックとポルノは誰しもが反社会的であることを教えてくれる。「欧州のポルノはすごい」デブは深いため息をつく「セックスは戦争なんだ」。2人で死海へ旅立ち、プカプカ浮いた。牛を追いかけまわしこれを犯し、煙草を吹かしながら乳を搾りとってジョッキで飲んだ。本物は重機を使う。重機を使ってセックスをするんだ。怯えながら欧州を眺める。遠くから眺めることしかできない。あいつらは皆大蛇を飼っているんだよ。大蛇を使って子供を躾けている。だから強い。彼等の教養と美意識の根底には大蛇がいるんだ。極東の猿はラノベを読むしかない。デブは絶望感に打ちひしがれていた。ポルノ愛好家は皆紳士的だ。非常に丁寧な言葉を使う。慇懃無礼でさえある。中国人を愛している!デブは叫んだ。日本海側の崖の突端に立って叫んでいる。韓国人も愛している!全てくれてやれ。愛のバカやろう。領土も資源も愛もリボンで縛ってくれてやれ。デブは立派な子供だった。俺とは違う。よくできた子供というのは大抵店舗を増やす。支店を出さなくて何が親孝行と言えるだろうか?店舗の神になりたい。全ての内装を支配するのだ。全て俺の指示だ。俺のイズムが内装の隅々に行き渡っている。俺の店にはポップアートが飾ってある。それは表の顔だ。地下のクリムトは限られた人間にしか見せない。細長い煙草を吸いながらソファに座って酒を飲む。極東にもこんな場所があるのだ。全て内装業者に一任した。内装業者は芸術家だ。内装業者を信じている。井の中の蛙、パンティーの染みを知らず。デブは死海でそう言った。どんなに地中海が美しくともパンティーの染みにはかなわない、俺にはそれが救いだよ…。誰もいない死海で2つの影だけが揺れている。卑屈な形をした2つの影だ。いつかそれを見つけたユダヤ人が笑うだろう。

(了)

袋格子


特殊な文章を11本収録。
「官僚」「丼」「ラーメン」「灰皿」「チケット」「闇」「文庫本」「府」「赤」「離人」「日記」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→袋格子

  抜粋作品:官僚

   婚約したカップルである、ゆず・北川悠仁と女子アナ・高島彩は円盤の墜落事故に巻き込まれ、未来帝国CXへと招待される。未来帝国CXでは女子アナが最高位の存在として君臨しており、男たちは便器のような名前を付けられ這いずり回っていた。男たちは皆女子アナを神として崇拝し、彼女たちへの奉仕を至上の喜びとしていた。女子アナ・高島彩は新たなる教祖として迎えられ、ゆず・北川悠仁は様々な葛藤を経た後、やがて女子アナ・高島彩の信者として服従するようになる…。より勢力を拡大していたフジテレビデモはこのような未来の秩序へ反旗を翻し、韓国人と肩を組んで体制瓦解を訴え始めた。マスメディアの失墜を願い女子アナたちをパンパンにすべくフジテレビの社屋をグラグラ揺らそうと尽力した。それしか手がなかった。インターネットには何もなかったんだ。廃人と社会不適合者の生放送で乗り越えられるものなんてどこにもない。「私は島田紳助ではない」。こう言い張ることで突破口を切り拓いた島田紳助にしか見えない島田紳助ではない何者かがマスメディアを君臨する。島田紳助じゃないんだからしょうがない。不問に付すべき問題そのものが存在しない。んだんだ。価値を紊乱し続けたテレビバラエティの究極の形としてこのような価値のゲームがまかり通る世界がそこには出現していた。価値を転倒させ殴り蹴り顔に唾をかける。フジテレビデモは未来帝国CXの樹立を阻止することができるのか?しかし仮にフジテレビ社屋が競売にかけられてもそれを買い取るのは島田紳助にしか見えない島田紳助ではない何者かである可能性が大きい。暴排条例が巨大な爆撃機のように影を落としてゆく。「私はヤクザではない」。ヤクザにしか見えないヤクザではない何者かがヤクザに見えないヤクザの時代を越えて、新しい価値のゲームを開始するのである。

(了)

ポコ腐


特殊な文章を11本収録。
「板」「青山」「事業」「会談」「トカゲ」「電話ボックス」「奴隷」「編集長」「武士」「平成」「大理石」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→ポコ腐

  抜粋作品:板

   Think different。ピカソやエジソン、アインシュタインやカラテカの入江などの映像が流れる。クレージーな人達がいる。自分が日照権を変えられると本気で信じる人達こそが本当に日照権を変えているのだから。厄介者と呼ばれる人達。自分は最低1年間やり抜く覚悟で佐川急便のドライバーになりました。貯めたお金で街宣車を買いました。同じ車を塗り替えて出会い系サイトの宣伝をしています。何かを積み上げるのが苦手な人間程起業を夢見るものである。藁を差し出して長者になった男の本を買い漁り、この子は藁を掴んで生まれてきたんですと期待を背負い、結局藁を掴んだまま寿命を迎え、速やかに焼かれ灰になる。私はあらゆる問題に対して慎重派である。賛成もせず反対もせず慎重派としての地歩を固め、ローションに流されるように前へと進んでゆく。カラテカの入江の下にもそれを頂点としたピラミッドがあるのだろう。社会というもののくだらなさには茫然とせざるを得ない。両手の指を繋げ小さな輪を作り、そこから社会を覗き、輪の中に収まる程度のピラミッドだけをそれが全てであると己に言い聞かせ羽ばたいてゆく。羽ばたいても羽ばたいても蠅のような音しか出ない。Think different。クレージーなだけの人達がいる。大量に犬を飼い、ゴミを集めたりするのだろう。氏の登場により町内会の空気は一変した。以前と以後の境目に立つ氏はやがて猟銃を持って隣家に立てこもり一家皆殺しの末警官隊に射殺される、これを町内会の人々は予想だにせず、不穏な空気の中子供の笑い声などが響き渡っているのである。

(了)

板々飛


特殊な文章を11本収録。
「圏外」「発電」「眼鏡」「カメラ」「夢」「沼」「シンセサイザー」「教会」「タンク」「モンスター」「頂点」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→板々飛

  抜粋作品:圏外

   君は誤解している。ポルノタワーの住人だからといって皆が皆助平なわけじゃないんだよ。陰毛で作った毛筆で愛国を謳ってこそ国辱的富国強兵は完遂される。窓口で申込書にポルノタワーと書くのが嫌だから、掘っ建て小屋に住んでいる。ブリーフパンツを頭から被って銀行強盗したけれど、そのまま暮らしていたのですぐに御用。桂文珍の自家用飛行機がポルノタワーに激突する。今頃桂文珍は天国の楽園で芸者と宴会だ。思えば落語家になった頃からの遠大な計画であった。テロリズムの豪速球は遥か彼方から投げられるため気づくものはほとんどいない。クローン培養された若き桂文珍達が次々と空母に特攻してゆき戦場の塵となってゆく。涙涙涙なしには語れない。鍋の蓋を開けると無数のジャガイモがグツグツ煮えている。それを眺めていると忘れていたリンチの記憶が甦ってくる。ジャガイモに重なる暴力の場面。殴り蹴られ糞を食わされ、グツグツジャガイモが煮える。蓋というものは危険だ。蓋を開けてはいけない。路上に蓋を置いておいたら誰も開けることなく時が経ち、置いた当人も開けるのが怖くなっていた。やがて一人の猛者が蓋を開けるとそこでは小人が町を作っていた。独自の通貨を発行し、核融合でエネルギーを生み出しており、ホログラムのバニーガールがビルの上で尻を振っていた。そしてさらに1000年後、彼等は高度に精神的な存在と化しており、あらゆる問題を克服していた。その頃ようやく冷凍睡眠から目覚めた男は「不完全な存在」と呼ばれ、研究の対象となっていた。「不完全な存在」の脳からは歴史的に価値ある情報が大量に採取された。スプーンに手足のついたような姿形の高度に精神的な者達は「不完全な存在」の脳内映像をテレパシーで共有する。機能的な研究室でポルノタワーに激突する間際の桂文珍の恍惚とした表情が静かに像を結び、忘却された暴力の世紀が思念の中で息を吹き返すのだった。

(了)

だらん柔


特殊な文章を11本収録。
「盆栽」「施設」「ポスト」「コーラ」「別荘」「エレベーター」「帽子」「放課後」「学園祭」「兵隊」「緑茶」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
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  抜粋作品:盆栽

  「それは朝日岩波、サンマーク出版的権威主義ではないだろうか?」。パタリと私は筆を置いた。素足で武道をやらねばならぬ。保守としての著者近影を望む。和服。鯉こく。下品極まりないのでゴザイマス。茶碗にチキンラーメンを入れてこれを食す。風情のあるチキンラーメンよ。権力とは和室である。和室で全てが決まる。どんなに近代火器が普及しようとも日本刀は人を殺し続ける。鐘が欲しい。ゴーン。なかなかゴーンなどと鳴る物は一般家庭にない。鐘という物を支配下に置きたい。自由にしたい。庭師はヤクルトをチュウチュウ飲んでいる。今から庭造るでよ。妖しい感じになるで。ふふふ。縁側に立つ若い未亡人を見上げている。庭師でやんす。様々な土地を渡り歩いてきた。山陰などにもいった。庭師はいやらしい手つきで知られている。彼は助平を栽培する者だ。和室の保守は常に庭師を眺める立場である。センセイ、天下国家のことなんざ、アッシにはわかりませんが、庭を造ることと少し似てやしませんか…。庭師のことは随筆に書いた。エッセイやコラムは書かぬ。和室とは随筆である。箒で掃除をせねばならぬ。ダイソンの付け入る隙はない。少し落ち着きなさい。落ち葉をかきなさい。欲しい物は竹熊手で手に入れる。ニコニコ動画に出ていいものだろうか?和室で随筆を書いているというのに。しかし鯉に餌をやる政治家の先生も出ているではないか。ふん。和紙の表紙をスリスリと撫でる。顎も撫でる。ふん。あしらいながら受け入れる。湯呑みがあればいいか。湯呑みでよしとしよう。ニコニコ動画であっても。しかしカラフル過ぎる。ニコニコ動画も和室でやって欲しいものだ。体裁が保守である。檜風呂。

(了)

雑草偶


特殊な文章を11本収録。
「茶碗」「丸」「旅行」「雑誌」「糸」「壺」「法治」「荒廃」「屋敷」「遺産」「違反」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→雑草偶

  抜粋作品:茶碗

   必ずパセリを食うことにしている。きっとパセリは天使のような姿で現れて恩返ししてくれるだろう。パセリは美少女。俺はそう信じている。株で儲けた小男はゲゲゲの鬼太郎のように木の上に住んでいる。賃貸マンションのサイトにひっそりとゲゲゲの鬼太郎のような家が紹介されていた。一反木綿とかマジ怖いんですけど。ニコ生でチンポ見せた。フクロウにスリーパー・ホールドを掛け、スウォッチを叩き割り、韓国に旅立った。職場に1人の新人がやってきた。片足が包帯に覆われていた。ヤクザにガスバーナーで焼かれたのだという。ただれた焼け跡を見せてくれた。足の裏の臭いを嗅ぎ未来を占う仕事をしている友人に会わせることにした。クンクンと友人は新人氏のボロボロになった足を嗅ぎ、「焼いても臭いものは臭いね」という結論を導き出した。帰り道、コングラッチレーーショーーン、と叫びながら台風がやってきて新人氏は巻き込まれ吹き飛ばされてしまった。石を積む仕事を覚えたばかりだというのに何ということだ。きっと新人氏はタンポポに生まれ変わって刺身の上に乗るだろう。蒸しパンをできる限り平べったくしてFAXで送り付ける。まだまだFAXというものは存在感があるのだ。「FAXッ」と叫んで他人の背中をパーンと叩いてやった。他人も「FAXッ」と叫んで俺の頬を強く叩いた。「FAXッ」「チンポッ」「FAXッ」。他人は他人でなくなった。お互い向かい合い両手を合わせズブズブと融合し一体化した。1体で2倍の存在となり天丼屋で2人前を頼んだ。衣に包まれた徳川家康をムシャムシャと食い、これで明日から黒船に備えて米俵を担いで生活できるのだ。一体化した他人同士は前途洋々であり、ひゃははと笑い声を上げた。

(了)

傾寸胴


特殊な文章を11本収録。
「葉脈」「田畑」「場末」「自転車」「松」「人間」「トレー」「高台」「CIA」「症例」「大蔵省」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→傾寸胴

  抜粋作品:葉脈

   親戚の子供が、大切にしている急須に「福島第一原発」などと油性マジックで書きやがったので、手慣れた動作で腰からベルトを引き抜いて、人生から輝きを奪ってやった。しかし私も、都会に住む身でありながら「大切にしている急須」なんぞを所有している状況はいかがなものであろうか。最近はベランダで瓢箪の栽培なども始めてしまった。電力がなくても瓢箪はできる。計画停電の闇、ロウソクを灯し、瓢箪を眺める。さてさて、我が家の「福島第一原発」でお茶を淹れるか。自嘲気味に呟き、お茶に満たされた茶碗を見ると茶柱が立っているではないか。ただちに縁起のいい燃料棒だ。この時の為に買っておいた扇子で頭をポンと叩き、放射能の降り注ぐ新世紀を乾いた笑いが込み上げる。手堅く生きてきた彼も彼等も東京電力には足をすくわれた。タワーマンションのように心が揺れ動いてもねずみ講の頂点を目指すようなことはせず、ハムスターのように頬を膨らませて蓄財し続けていたというのに、全てがただの最終ラインを耐えているゲロのようになってしまうなんてどういうことだ。これからずっと長い屁のように放射能が垂れ流されるのだ。昔、私が夜中に出した記録的な屁よりも長いだろう。あまりに長いので、このまま止まらず、全ての細胞が屁になって、がらんとしたアパートの一室だけが残るのではないか、そのように怯えたあの屁よりも長いのだ。やはり初動の遅れが問題だったのだろうか。東京電力の恋愛体質には困ったものだ。もう格納容器でキノコご飯でも炊くしかない。四つ葉のクローバーをくわえて不意にゴロンと寝転がる。無人の福島第一原発半径30kmに咲き誇る桜の中で逃避行してきた未来の誰かが花見をするのを空想し、もはや招致できるのはホームセンターくらいになってしまった大東京を生き延びる。

(了)

積楼閣


特殊な文章を11本収録。
「廃棄」「格言」「自動」「ラクロス」「入金」「物体」「くノ一」「割引」「フィルム」「クッション」「衰退」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→積楼閣

  抜粋作品:廃棄

   ひょろひょろとしたコンドルがシメジをくわえて飛んでゆく。情けない音楽がラジカセから流れるのを頬のこけた短足が膝を抱えて聴いている。カイワレばかりが生え揃い、砂漠にモヤシの蜃気楼。オタクが神経質な痙攣踊りを繰り広げ、AKBの裾野で握手の両手が虚空を泳ぐ。プロバイダーに怒りの矛先を全て向け、キッチンドランカーのハードボイルドに派遣のバイトが貧乏揺すりで立ち向かう。ああ、蛇の抜け殻を集めては、ああ、蝉の抜け殻を集めては、拒食症が身にまとう。痩身の住所不定に首を締められた白鳥が、限界集落ではたを織る。バーコードのようなリストカットのメッセージは己を資本主義社会の商品に過ぎないのだと言い聞かせ、ポンコツ潜水艦が日本列島に忍び寄る。スクランブル交差点の真ん中で薄らハゲがそよそよと、年老いたオカマが強風に飛ばされて、109に引っかかる。インテリが肉体労働者の怒声にヒイイッと両手で頭を庇い、鍛えあげられているにせよ体育教師の身体には野生の魅力がまるでない。背広とコートを掛ける為のハンガーでしかないうだつの上がらなさを引きずって、地獄への道は糸屑で舗装されている。ルンバの上に片手片足のもげたリカちゃん人形を据え付けて、コンビニ袋の横たわるワンルームの回遊は、ここで死ぬにはもってこいと思わせる。明後日の方向に頭部の曲がったリカちゃん人形は常に天井を凝視しながら表情を変えず、現代という閉域でこのような舞踏が催されているのだ。ボロボロに折れた傘を差して夢の島まで歩いてゆこう。嗅覚だけで動物愛護センターに辿り着き、汚れた犬を抱き抱え、東京湾に入水する。

(了)

布角界


特殊な文章を11本収録。
「開国」「連合」「竹刀」「画像」「裁判」「会員制」「大声」「運営」「迷宮」「面接」「火薬庫」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→布角界

  抜粋作品:開国

   思えば悪ふざけみたいな名称のチーマー達が今や日本社会の一角を支配するようになっているのだから、電波少年が復活しても松村邦洋が夜中の繁華街に突撃することは困難だろう。無表情な雑居ビル、各階の猛者達と闘い高層階に昇り詰めた市川海老蔵は強靭なハーフの鉄拳に惜しくも敗れ去るが伝統芸能の底力で、私の年収低すぎ女をお前の年収いくらだ男に差し替えて、ポータルサイトで見得を切る。USTREAMで自殺が公開されるこの時代、全てが表に出されるが、見て見ぬ振りの作法が身に付いて、闇は闇として機能する。今や雑居ビルこそが最先端であり、見えないルールに従えば治外法権の1つや2つ簡単に出来る体制だ。普天間基地も雑居ビルに移設すればいいんだよ。酒を飲ませた市川海老蔵を北朝鮮に送り込み、1人や2人じゃない、量産した市川海老蔵をあちらこちらの海岸から侵入させるのだ。生きているのが嫌になるような陰湿な罵倒を容赦なく浴びせかけ、北朝鮮指導部に白旗揚げさせるしかないだろう。帰国した市川海老蔵は本体を先頭に無数の量産型を従え西麻布へと向かう。さらに力を増していた関東連合は既に空母を所有し、普段から数台の戦車と黒い馬を足がわりにしている。IT、金融、芸能、マスコミ、広告代理店、政治家、暴力団、全てを巻き込んだ最終戦争が夜中の繁華街で始まろうとしていた。日本国財政破綻前夜、内戦の時代は静かに準備されていたのである。

(了)

筋節塊


特殊な文章を11本収録。
「地点」「トラック」「土地」「四季」「モデル」「不燃」「営業」「邦画」「公開」「酒」「駐車」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→筋節塊

  抜粋作品:地点

   有線から流れるクソみたいな曲廃止法案の成立には当時の経団連会長、女体 盛造(にょたい もりぞう)の強い働きかけがあったとされている。100円ショップの肉や魚で構成された戦闘用人造人間、無為徒食3号がシーチッチした爪楊枝が機関銃の薬莢のように吐き出され、無限の扉をバタバタと突き進んでゆくとウスターソースが置いてあった。3流大学の学生が5流大学の学生を萌えアニメの件で殺してしまい、サルでもできるような仕事をこなす者達同士で派閥を作り定期的に政権交代が行われる、このどうしようもない世界の中心で思い通りに動かないパソコン相手に尋常ではない程キレてみせる。格差社会などと言われる前からこのような者達は存在していたが、どのように一億総中流意識なるものは成立していたのか子供電話相談室に聞いてみたけれど声質で大人と判断され答えていただけなかったのである。金の卵が続々と上京し、石ころを集め、朝から晩まで磨き上げパワーストーンに仕立て上げる。脂ぎった顔の社長がでっぷりと膨らんだ腹をさすりながら飛ぶように売れるパワーストーンで幸福を手に入れているのだ。パワーストーンによる利益で高級ハイブリッド車に乗り、ギトギトとした自らの脂だけで動き回る燃費の良さによりただの一度もガソリンスタンドを利用したことがないという。ボウリングの球のように転がるパワーストーンが悪魔の尻尾を生やしたマネキンを破壊するCMが奏功し、相手の陣地を核攻撃しホログラムのキノコ雲を見て喜ぶアメリカの子供で有名な退廃的なボードゲームと競うようにバカ売れした。そこにステッキを持った経団連会長、女体 盛造(にょたい もりぞう)が現れ、鮮やかな采配によりカイゼン、カイゼンでパワーストーンを世界中に転がして1ドル20円でも利益が出る磐石な経済を築き上げたのである。

(了)

炎巻獣


特殊な文章を11本収録。
「液体」「円環」「納車」「時価」「刀」「保険」「空き巣」「下請」「軍事衛星」「副業」「観光ホテル」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→炎巻獣

  抜粋作品:液体

   死んだ子の歳を数えるように、陰毛を拾っては投げ、拾っては投げる。まさに仰向けに引っ繰り返ったゴキブリの脚の如き悲しみに備え防空頭巾で日々暮らし職場いじめに邁進する。このママチャリでゆけるのはどこまでなのか、果てしなく長い道路を走行しても気が付けば見慣れた自販機とタバコ屋の風景に舞い戻る。自分と言葉の間に溝がなくなりまるで昆虫のようにスラングのみの会話を施し、走り逃げるそばから橋が崩れてゆくように忘却と共に労働をする。粗雑な生物の分際で、鶏が卵を生むなんて、あんなにつるつるした丸いのを仕立て上げるとは見上げた根性だ。このクソガキも卵だったら楽なのに、叩いても蹴ってもびくともしない卵なら、熱湯ぶっかけても煙草を押しつけてもびくともしない卵なら、ベランダに出し続けていられるのにな。無縁社会にズラリと並んだコンクリートの一室で、膝を抱えてワイドショーを垂れ流し、観葉植物のシルエットのようになるくらいなら巨大な卵のまま突き破って現れることなくベランダで寒空をせせら笑っていたいもの。チリンチリンと鈴が鳴る。ズラリと並ぶ自転車の連帯を我関せずと一つ一つ鈴を取り外して麻袋に入れてゆく。母親の彼氏という立場のチンピラシャツが出来るのはその程度のことでありパチンコ一つ勝てやしない。換金するって悪いことですか?パチンコに勝って勝って勝ちまくったんです、パチンコに勝って勝って、人生に負けて、無縁社会の寒空で枯れすすきすら生えてこない。鶏の如くズラリと並んでパチンコ玉の音を聞きながら時が経ち、駐車場の車を覗けば巨大な卵が鎮座ましまして、直射日光の攻撃でいつのまにやらゆで卵。

(了)

豆紐岩


特殊な文章を11本収録。
「潜伏」「洗濯」「大臣」「農村」「肥料」「苗木」「文学」「入力」「線路」「筏」「アーチ」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→豆紐岩

  抜粋作品:潜伏

   朝起きて、やることといえば、ストリートビューで弘道会の建物をグルリグルリと眺めてみては、拙い持ち方のスプーンでコーンフレークをバシャバシャ食べる。レゴブロックで弘道会の建物を築き上げる者もいるだろう。未来のストリートビューならば寡黙なシャッターの向こう側へも突き進んで行けるのだろうか。ヤクザの事務所というのはとてもとても堅牢で、エヴァンゲリオンでも拘束しているのかと思ってしまい、解体された後藤組の建物を見ようにも結界の内部で眼差しを踏み入れることは出来ない模様。昼のラジオの日替わりコメンテーターとなった後藤忠政元組長の言葉を聞きながら主婦が皿を洗う光景を幻視せよ。ガチの中のガチの人をいよいよ市民社会に引っ張り出す計画を思い付くも、ラジオのCMに耳をそば立てれば、創価学会ばかりの渡世でこれをJALに差し替えられればなあなんて望みを託す。とてもとても堅牢なシャッターを通り抜け、階段を深く降りてみればミノタウロスが潜んでいる。この社会にはミノタウロスがいるのだから、それを飼い馴らし使いこなす為には堅牢な建物と威圧的な看板が不可欠だ。ミノタウロスが亡霊のようになるのならば実話誌なんかもいつまであるかわからない。実話誌のバックナンバーをPDF化してiPadで読んでいる。遠く遠くの宇宙まで飛ばす予定の探査機に実話誌を詰め込んで宇宙人に見せ付ける。まるで実業家にしか見えない経済ヤクザのにこやかなトークの中、その胸元から華やかな刺青が翻る。ホステスの前で背広を脱ぎ、背中を見せる、刺青の全体像が間接照明の中で浮かび上がる。獰猛なミノタウロスが刃物を持って舞っている。

(了)

葉肉旗


特殊な文章を11本収録。
「破産」「江戸」「喫茶店」「天気」「規制」「飲食」「層」「マイク」「景気」「アジア」「輸送機」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→葉肉旗

  抜粋作品:破産

   総選挙で大勝した与党側は磐石な体制であり、余裕で重要法案を強行採決していった。国会答弁をアバウトな内容で終えた首相は席に戻りながら半笑いで軽くロボットダンスを行い、隣席の閣僚が「ウヒャヒャ」と手を叩いて笑い声を上げた。様々な委員会で与党側議員は指先にとんがりコーンを嵌めるなどして心ここにあらずといった姿を晒した。ライオンに乗った全裸の男がそうした状況に異を唱えるが、非常識な格好であると警察官に諭され大きく世論が喚起されることはなかった。長期の拘留を終えた全裸の男は「時代のけじめ」と書かれた金太郎腹掛けを身にまとい全力疾走で皇居の池に飛び込んだ。マスメディアの無関心の下、六本木ヒルズのウハウハ状態はそれなりに維持されていて、世の中そんなに変わっちゃいなかった。「急げ者ども者ども急げ」危機感を抱いた一本筋の通った右翼が大枚をはたいて魂の叫びを訴える「入会金無料ーっ、1時間はっぴゃくえん、リンリンハウス、リンリンハウス」。次から次へと世に出て来るのは詐欺師まがいの屑ばかり。立派な肩書きの詐欺師の詐欺は誰に指弾されることもなく見事に完遂、市民生活の塀を構えてヘラヘラ笑う。全く世の中碌な奴がいないんだよ。碌な奴っていうのは本当に希少だよ。皇居の池から一条の光が天空に向かって立ち上がり金太郎腹掛けの男が上昇する。オイオイオイ、オイオイオイ、安酒飲んでいる場合じゃないんだよ。「急げ者ども者ども急げ」清められつつある歌舞伎町の中心で一本筋の通った右翼がメガホンを曇天の空へ向ける「入会金無料ーっ、1時間はっぴゃくえん、リンリンハウス、リンリンハウス」。人生の敗残者がよろよろと現れ遠くから待ち合わせ場所を凝視する。尋常でないデブの女が目印のミドリザルを連れて立っている。清められつつある歌舞伎町の地平線に肩を落とした人生の敗残者が少しずつ小さくなるかのように去ってゆく。

(了)

棒切象


特殊な文章を11本収録。
「デモ」「フランス」「ネズミ」「黎明」「啓示」「安全」「薬品」「適応」「武装」「古本」「遭遇」。 
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→棒切象

  抜粋作品:デモ

   暴利を貪る豚共に俺は言ってやった。焼き殺しちまうぞ。チャッカマンで焼き殺しちまうからな。変身前のチャッカマンには人並みの名前があったはずだ。終戦後、アルゼンチンに逃亡していたやくみつるの身柄が拘束された。「金貨など不要なのだ、ほしいのは命令だ。これからどう進展するのか知りたいのに」。裁判の後、コメンテーターが白衣を着た博士の監視下で社会の逸脱者を装った仕掛け人に電気ショックを流す「やくみつるテスト」が繰り返された。大半のコメンテーターは違和感を覚えつつも、権威的な博士の指示に従い致死レベルの電圧を与え続ける結果となった。ゆとり教育下における教師の裁量で俺はその歴史的事実を教えられた。人間も社会も歪な形をしているのだから円周率なんてどうでもいいのです。円周率なんておっぱいでいい。毎日、学校の帰り道に東京タワーを見た。夕焼けの中でそびえ立つそれは総務省と電通の監視下で電波を流し続けているのだ。電波もビリビリという音を立てて欲しいものだ。稲妻のように光って欲しい。それでこそ企てられた密室のような社会の姿が露になるというものだ。白衣を着た秋元康が冷徹な眼差しで「迷うことはありません、あなたは続けるべきです」と命令する。AKB48が眩し過ぎ、部屋を暗くしてテレビの前に座っていた者達が致死レベルの週刊文春を突き付けられる。「AKB48テスト」は容赦がない。俺は拳銃のようにチャッカマンをクルクルと弄び、東京タワーに火を付ける。うおお、うおお、と貧しい生活と低い地位を余儀なくされていた者達が快哉を叫ぶ。俺は点火したチャッカマンを歪んだ顔のこいつらに向け、意味ありげにカチャカチャと引き金を鳴らし、新しいテストの形を夢想する。

(了)

根菜団


特殊な文章を11本収録。
「組織」「醤油」「休憩」「逮捕」「漏洩」「スモッグ」「自由」「チョーク」「渦巻」「批判」「アメリカ」。 
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→根菜団

  抜粋作品:組織

   「ドラッグストア」の異名で鳴らした押尾学氏は市長時代に「すぐいる課」を市役所に設置したことで知られている。押尾氏の偉業に続けとばかりに蜘蛛の子を散らしたようになったかと思えばもはやこれまでと観念することしきり。これからの時代は事業仕分けされる者とされない者に分けられる。愛は不毛、人生は不毛、そのような感慨は事業仕分けの餌食にされる。あああ、さっきからずっと糸杉が続いているよ。無限糸杉の罠にかかったな。片栗粉で作った海の上をペタペタと歩く預言者曰く、これからは力うどんです、「力うどん力」という新書をバイブルに。「力道山力」もベストセラーに。力うどんでキャリアを積み重ねてこの社会の強迫観念を増幅させて行け。スーパーコンピューターより計算高いこの私、茂木健一郎が金に無頓着とは信じ難い。時折欲に溺れたような表情を見せるあの男にそんな仙人感覚があったとは。しかし金より名声なのかもしれぬ。マスメディアで凡庸駄話並べ立て口座にカウントされる数億をマルサの女がアイスキャンディーを舐めながら崇め立てる。脳内革命の昔から脳みそは金になると決まっている。同じロマンのブラックボックスなら宇宙事業が金になってもいいじゃない。堀江貴文の獄中ブログを心待ち。エスパー清田の夢よ再び、チンケを絵に描いたような男が何者かになろうと画策し、スプーン曲げに辿り着いた、この切なさに涙しながらグラビアアイドルから事業仕分けの側に立つまでに至った蓮舫の「蓮舫力」なるものは確実にあるに違いない。

(了)

割置物


特殊な文章を11本収録。
「燃焼」「隠蔽」「ハウス」「光」「架空」「ミクロ」「禁忌」「経費」「極北」「横領」「近代」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→割置物

  抜粋作品:燃焼

   夕方、事故物件で1人、足の指、爪を切る。凄惨な染み指でなぞり流行の歌、口笛。ラジカセを背負う黒人の姿確認しては怯え晴天の空にE.T.を探す。雑誌の表紙になった枯れ木のようなCOCCOを茶碗に描写。寂れた風情でココア飲み干す。空き地の猫数匹プロレスリング、狂犬舞い込み凄惨な叫び、通りかかるCM美女の眼差しに焼き付く、離れない。自殺者多数韓国芸能のシビアな現実、クンクン鼻で嗅ぎ、台湾美女の写真を漁る。筋金入りはアジア圏全体を視野に入れている。そしてまた列車がやって来て難民が降りて来る。飛び立つ旅客機、金網の向こうで、叫び難民多数。世も末、落ち着いて緑茶を飲む必要がありますな、COCCOの茶碗でクイッ。天真爛漫バカ、バレリーナ、薔薇を咥えて、侘び寂びの如し。太陽光線だけで太る、この体質、夏になると無尽蔵に太り、汗を流し、それだけの為に生きているような、下等生物の如し。満員電車の中で、スーパーマンになって、空を飛ぶ夢想、心は自由、想像も自由、頭にネクタイ巻き付けた、日本社会を反映したスーパーマン夢想、自由は炙り出す、心と想像の貧困炙り出す。事故物件、住み続け、金縛り期待するが、特に無し、その代わりサンタクロースがやって来て、スーパーファミコン、くれた、壁の染みにも馴染み、お茶を沸かして煮干を齧る。ガラガラと窓を開け、晴天の空、鳥が飛ぶ、旅客機が飛ぶ、今日もキノコ雲1つ、風圧で民家の屋根吹き飛ぶ、カレンダーにピカドンの文字、いずれ絵本にする、大量虐殺を前にして、事故物件、今更の如し。

(了)

草花盛


特殊な文章を11本収録。
「破片」「写真」「途中」「中心」「離島」「セラミック」「赤坂」「記憶」「危機」「伝統」「委員会」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→草花盛

  抜粋作品:破片

  「廃屋で強姦なう」。俺の魂はtwitterへダイブ。CR火垂るの墓でフィーバー。缶を叩くと無尽蔵にドロップがこぼれ落ちファック、ファック、ファック人。「資産家宅で絞殺なう」。twitter野郎の痕跡をプリントアウトして電柱に貼り付けて回る。「痴漢なう」。うおお、とばかりに盗撮していた己の携帯電話を発覚と同時に踏み付けて壊す。この人痴漢です!うおお。「痴漢発覚なう」。著名人有名人芸能人がtwitterへ向けて列を成して歩き出す。CRソウでフィーバー。腐った豚のミキサージュースが無尽蔵に流れ出す。LOSTが全シーズン同じ島の話だとは驚きだ。長居し過ぎだろう。京都人にぶぶ漬け出される勢いだ。うおお。CRtwitterでフィーバー。人々の思念が無尽蔵に溢れ出す。うおお。もう子供を芸能界に入れて金稼がせるようなことには未来が無い。俺の子供はパチンコ台にする。CR太郎。CRよしお。俺も改名して苗字はCRにする。イグアナじゃない、俺の子供はパチンコ台に見える。広瀬香美の参入でtwitterの群れは大きく舵を切った。ビバ☆ヒウィッヒヒー。審議会やシンポジウムの速記なんてしている場合じゃない。政治も経済も全て来るべきスイーツによって凌駕される。ビバ☆ヒウィッヒヒー。「おいしい物なう」。「素敵な場所なう」。「脱毛なう」。俺のドス黒い魂はtwitterの辺境でドクドクとその欲望をフィーバーさせている。CR変態を一心不乱に戦えばいつかtwitterを薄汚れた廃屋のような場所に引きずり下ろしてやるからな。

(了)

色岩石


特殊な文章を11本収録。
「構造」「自然」「決議」「分裂」「学園」「泥」「月光」「守銭奴」「行事」「学歴」「終焉」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→色岩石

  抜粋作品:構造

   人気ライトノベルシリーズ第1弾「北野誠の憂鬱」、そして最新作「北野誠の消失」を最後に誰もこの話題に触れなくなった。アメリカ南部の農民がインタビューに答える。「その日アイツが一杯やりにウチの方へ向かって来るのを見たんだ」「突然空からバーニングがやって来てアイツをさらって行っちまった」。キャトルミューティレーションもきっとバーニングの仕業だ。血液どころか芸能マスコミは骨抜きだ。齧歯類顔の梨元勝、前田忠明のドス黒い夜、草原を跳ね回っているに違いない。霊長類齧歯類科のキャトルミューティレーションは済んでいるのかいないのか。ジャニーズ、吉本、バーニング、このトライアングルで旅客機だって消せるはず。草なぎ剛も未来に行って帰って来たとは言えないからね、遥か1000年後のミッドタウンでは抽象的な人類が高度な文明を繰り広げていた。リドリー・スコットによる有名なCM、車のフロントガラス越しの中田カウスに向けTシャツ姿の女がハンマーを投げ付ける、そんな世界がそこにはあった。すなわちビッグブラザーによる管理ではなく1人1人が中田カウスのように己の顧問室で悠々自適にくつろいでいた。現代へと戻って来た草なぎはもうかつての草なぎとは違う。表面は生体組織に覆われているが内部は鋼鉄の意志が歯車となり稼動している。生放送の番組における前代未聞の不祥事に向け、着々と彼の計画は進んでいるのである。

(了)

赤青帯


特殊な文章を11本収録。
「胎動」「処世」「昆虫」「前兆」「病院」「破綻」「基盤」「残骸」「道楽」「牧草」育成」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→赤青帯

  抜粋作品:胎動

  「うひひ、勃起ノ助でやんす」。レールの上を木の板に乗って下品なイラストがやって来る。プー。圧力鍋が音を立て、アメリカデブのゲップがレストランに響き渡る。『投稿者: ちんぽの宿 投稿日: 8月2日(土)6時32分 本文: うひひ、勃起ノ助でやんす。 投稿者: 番頭 投稿日: 8月2日(土)7時12分 本文: ちんぽの宿さん、はじめまして(変わったHNですね、(^_^;)。 投稿者: 毛沢東 投稿日: 8月2日(土)9時14分 本文: 小泉竹中許すまじ』。レールの上をゾウムシの会がやって来る。18世紀にゴルジ体をやっつけてから彼等の天下なのだ。21世紀のナポレオンは下等生物だった。視聴率低下の為テコ入れで金玉ノ助が投入される。NHKに出る時は皺皺ノ助となる。新発売キンタマール。せーの、民放CMで一斉にキンタマール。ふくらはぎにキンタマールを塗ればふくらはぎが肩こりにならない。全員グルってことじゃないですか。上流階級の情報交換であいつらだけ利益を得るという寸法だ。ゾウムシの会が侵略するしかないな。ゾウムシって小さい象かと思っていたらただの虫じゃないか。半ズボンが半べそだ。小さい象なんて見るようになったら警察が来るんだよ。ようしわかった。半ズボンは立身出世に勤め総理大臣になった暁にLSDを合法化してやった。ゾウムシの会はそのまま国軍となり最も先進的な社会が極東に誕生したというわけだ。

(了)

軟体傘


特殊な文章を11本収録。
「没落」「記念碑」「禁断」「ライブ」「再生」「暗黒」「虚言」「砂漠」「辺境」「協会」「手口」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→軟体傘

  抜粋作品:没落

   理系が馬に乗ってやって来た。うらなりどもが奮起して「こうすればいいんじゃないか、やっぱりやめとこう」シンポジウムを企画する。僕は消え入りそうなおならをしたかと思えば、その実ハードロックなんて聴いている。森の小人は分厚いレンズを磨いており、うらなりが定期的に買いに来る。「こうすればいいんじゃないか、やっぱりやめとこう」シンポジウムの音声を録音していた客席のうらなりが警備員に取り押さえられる。他のうらなり達がクスクス笑い、その内の幾人かはブログ戦国時代の覇者として自らを律している。職場の片隅にいる若禿は自らを信玄として位置付けており、録音なぞする者は邪道なり、地方国立に合格した頭脳で記憶するなりと、己に己の信念を唱えてみせる。短足のうらなりは背筋を伸ばして自転車を漕ぎ巨大な頭を揺らしている。向かいからライターデビューを果たしたイジリー岡田のような眼鏡の小太りがやって来る。こいつは昔から世渡りだけがやたらと巧い。リベラル・アーツなんて糞食らえ、お笑い評論家としての道を歩んでいる。無論ライターデビューとはカストリ雑誌で金を貰ったというだけのこと。時折裏声になる早口で目玉をギョロギョロさせながらM-1について熱く語る。いずれ俺はこいつより先にラジオのゲストに呼ばれてやる。恥臆面も無く若者に媚びる言説をブログで唱えてやるつもり。ロスジェネ、ラノベに派遣村、ラジオのゲストに出る為に全て利用してやるからな。

(了)

茸紋様


特殊な文章を11本収録。
「全裸」「豆腐」「野菜」「供物」「集金」「日暮里」「ストライク」「実験」「長押」「妨害」「ライオン」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→茸紋様

  抜粋作品:全裸

  「これを見なさい」1枚の写真を渡される「与一だ。君の許嫁だよ」。片手に鉤状の義手を付けた老人の写真。「80歳だ」「だが心配はいらない。与一は160歳まで生きる」「与一との時間はたっぷりある」。昨日遠くから与一を見かけた。森に逃げ込んだ脱サラを村田銃で脅かして来た帰りだった。私は悲しみを毛筆でしたため、夕焼けなどを見て過ごした。スカイネットの暴走により機械化された高卒が村を支配して早5年。漢字の読めない大卒が時折ゲリラ戦を仕掛ける。バス会社とタクシー会社、ガソリンスタンドを所有する巨大グループも学歴コンプレックスをバネにした小卒によって創業されたのだ。天皇陛下のラジオ放送を聞いた後、教室で教科書に墨を塗り、「因数分解じゃ腹膨れない」とだけ上書きされた。無論私も県立を出た後は一族の経営する保険の代理販売に手を染める。装甲された大卒の白タクが役場に突っ込んで来たらしい。容赦の無い銃弾の嵐を跳ね返すその頑丈な体躯を与一が一撃で仕留めたのだと言う。与一は義手ではあるものの機械化はされていない。駅前のあらゆる企業とも無関係な独立した存在であり、村の陰湿な論理からもまた中立を貫いていた。東京で成功した同級生の悪口で盛り上がる機械化された高卒と降伏した大卒達の同窓会を醒めた眼で眺める与一を見ているうちに私は己の未来について考えるようになったのだ。そうそして私は片道切符で村を出て、4年制大学軽音楽サークルのコンサートに日々出かけている。地方分権が達成されるずっとずっと以前の話である。

(了)

縮蝋燭


特殊な文章を11本収録。
「パルムドール」「操作」「都」「天使」「巣鴨」「深夜」「ブーム」「塔」「貧乏」「ゴーゴー」「托鉢」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→縮蝋燭

  抜粋作品:パルムドール

   吾が舞へば、麗し女、酔ひにけり。攻殻機動隊の音楽に乗せて安達祐実の母親が全身整形を施されて行く。絵文字から象形文字への変遷は眉唾な気配が漂うが、「トチ狂う」の由来は安達祐実の母親に違いない。際限無く刺激が求められる現代、「まだ甘いんじゃないか?」。リポビタンDのCMにも得体の知れない出資者の思惑が反映される。北朝鮮に潜入する筋骨隆々、ソマリアへ降下する筋骨隆々、テレビでヤクザの批判をする筋骨隆々。シリーズは諸事情で短期間で変わり、その度に出演タレントのランクは下がって行った。「蒟蒻ゼリー販売停止にする前にやることあるんじゃないか」という経済学者の提言によりようやくシリーズは終了し、夏の1日はリポビタン弔として休日になった。カンヌ映画祭出品作品「リポビタン弔」の舞台は古い日本家屋である。カメラ付きの精密誘導弾が建物内部に放たれ、居間に座るよし夫(52歳・団体職員)を破壊するというものだ。概略から判るように異国情緒を売り物にしたあざとい作品である。しかしながらその斬新な映像感覚はたくさんのフォロワーを生み、物凄いスピードで風景が流れ標的の驚く顔のアップで終わる展開が映画界を席巻した。リメイクされた「ピアニストを撃て」も同様の終わり方をし、これのヒットを最後にハリウッドは低迷することになる。精密誘導弾の低価格化と小型化によりハリウッドの優位性が損なわれた結果であった。今や一般人が精密誘導弾で飼い犬を撃つ映像を動画サイトでアップロードするのだから時代の変化というのは怖ろしいものである。

(了)

切錠剤


特殊な文章を11本収録。
「牛乳」「賃金」「広島」「沿岸部」「水槽」「彫刻」「枠」「交通」「VFX」「平行」「アフガン」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→切錠剤

  抜粋作品:牛乳

   エコ利権で現れた無精ひげの男は体をボリボリと掻きむしりながら汚れた池の水を飲み始めた。すると男の肛門から浄化された水がじょろじょろと流れ出て来た。池はきれいになったが今まで以上に人が近寄らなくなった。付近のマンションに住む小説家の作品にこの池が登場する。「窓から見える花魁池は静かだった。かつて花魁達がキセルを突き出して潜水をしていたというその面影はもはやない。愛を失った私は花魁池に入水する。真っ直ぐ前を見据え水の中を歩き階段を降りるパントマイムにより腹から胸、やがて肩まで浸かり沈んで行くのだ。相当な覚悟が必要である。なぜならば水面下で階段を降りるパントマイムを行うのは私自身の意志に他ならないのだから」。文学部の教授はこの一節を朗々と読み上げてからパタリと本を閉じた。そして思索を飲み込むように深く目をつむり、再びパッと見開き言った。「人間性というものを信じないといけません、そしてゲットーを直視するのです、それでもなお人間性を信じないといけないのです」両手を軽く広げ問題の大きさを表す「とても困難なことですが」。「ハァ?」。結局鼻をほじって聞いていた学生が最も成功した。「花魁とかバカじゃねえの」。余計なことは考えない。現代はスピードが求められる時代です。哲学だの思想だの言っているのに限ってブログの駄話で上昇したいとかアフィリエイトで金欲しいとかそういう志の低い世界を生きるのです。ケバブ売りながらストンプでもやらないと駄目なのです。

(了)

薔薇炉


特殊な文章を11本収録。
「更新」「改革」「攻撃」「南極」「啓発」「大人」「蝉」「鬱」「ケータイ」「白金」「前近代」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→薔薇炉

  抜粋作品:更新

   子供達の目の前で鶏を絞め殺していると、和服姿の白人がやって来たようだ。気付かず鶏を絞め殺すのを続けた。「ほい、こりゃ」。原体験。ワシも蛙の解剖で目覚めたクチですから、クックックッ。白人は吹き矢の筒を咥えている。「なんぞ」。ワシはようやくアングロサクソンの気配に反応する。「それは人権侵害ではないか」「そんなことが公然と行われていて良いのか」「むざむざ見過ごすとはジャーナリズムとは言えない」。真剣白刃取りなんて未だかつて行われたとは思えんね。そやさかいワシはクイっとコップの水を飲み干して「土人にそんな理屈通用すると思っているのかね。誹謗中傷が栄養分さかいに」こう返してやったわけだ。白人はプっと吹き矢を放った。矢というよりも小さなジャイアント馬場でありワシの所まで飛んで来たかと思うと「プッ」と耳打ちして落ちて行った。海草まみれの少女がバケツを持って現れ白人の横を通り過ぎて行く。バケツの中には奇病を患った巨大なランチュウがおり、肥大化した頭部は反社会的な妄想を繰り返しているのである。海草まみれの少女は瞳に鈍い光をたたえながら、いずれこのランチュウは川に流すつもりなのだと言う。白人は生粋の日本人であることが発覚した。「堀江貴文というのは、極めて特殊な人格だが、同時に彼は普遍的な存在である」「あの冷淡さや酷薄で浅薄な人格はまさに人間の本質ですよ」。生粋の日本人は白人の振りをしながらやがて権力を握り1万円札は堀江の顔になった。ワシは子供達と共にランチュウを食べてしまい、それを知った海草まみれの少女は柿の木で首を吊った。海の向こうには中国大陸があるのだった。

(了)

蟹無残


特殊な文章を11本収録。
「書体」「創造」「掃除」「故郷」「喧嘩」「都会」「覇権」「茶番」「幻想」「詐欺」「夜行」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→蟹無残

  抜粋作品:書体

   結婚披露宴の引き出物は土偶だった。海に落ちた車をクレーンで揚げると中から土偶が大量に発見されたニュースは聞いていたがこんな所に浸透しているとは意外であった。2回目のお色直しの時、新郎はふんどし一丁にひょっとこのお面で現れ来賓の者達は大いに驚いた。「おお」とどよめいたのだ。帰りのタクシーの中で親戚の男2名が「いやあいつまでもつかねえ」などと話している姿が隠し撮りされており映画「トランスフォーマー」の特典映像としてDVDに収録された。昨日駅前で新婦を見かけた。首から「公衆便所」と書かれた札をぶら下げて立っていた。もう夫婦喧嘩かね、と思ったがそうではなく昔から伝わる新郎一族の習わしとのことだった。鳥葬かこれかみたいな話でリポーターが雑草の生い茂る線路上を1人マイクで語りながら歩いてくるような風情であった。せっかくだから私も彼等の家の塀に「ひとごろし」などと書いてやった。深夜に再び赴きスプレーをカシャカシャと振りながらこの塀はキャンバス、俺がいた証…、俺がいる証…、HIPHOPな調子で「でていけ」とさらに吹き付けてやった。私は先日離婚したばかりで帰宅すると自分で灯りをつける。コンビニの弁当を温めて貪る。新聞を広げるとカラフルな土偶の記事が載っている。そのうち萌えだのラノベだの取り入れるんだろうか?まあ時代だね。ため息をつくと、一瞬卓上に飾ってある私の土偶がはにかんだような気がした。明日は晴天でツバメが飛ぶだろうな。

(了)

貝ひも機


特殊な文章を11本収録。
「階級」「ジェダイ」「甲虫」「楽土」「寺」「泡」「売却益」「崩壊」「木材」「青空」「アルプス」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→貝ひも機

  抜粋作品:階級

  いつの間にかアパートの取り壊しが始まっていた。まず2階の大半が消失しており3部屋程がまばらに残っていた。某氏は無事であった。私は胸を撫で下ろしパイプをコツコツと叩くと筒状に丸まった手紙が落ちて来た。「リア・ディゾン 涅槃で待つ」…差出人・岸信介/職業・ロビンマスク。私は階段を昇り某氏を見ると、粘土状の髪の毛がニョロニョロと伸びているまさにその時であった。百姓達が残った部屋を打ち壊しているのだ。皿を割ってストレス解消出来る居酒屋の特集がトゥナイトで行われる。私は愕然とした。百姓達は何も訴えていないではないか。ただゴザにアドレスが書いてあるだけだ。そんなことではいけない。私は片腕を取り外し露になったサイコガンをゴザに向けた。するとパタパタとフランス女が走り寄って来る。「このファシスト!」。顔に唾。私は平静を装い不適にニヘラと笑った。走り去るフランス女は二つの内左側の壁を突き破り泥水に沈んで行った。気が付くと百姓は1人だけになっている。クイズ司会者のように白い背広で近寄ると事実を知った。百姓が円を描くように体をくねらすとタイミングをずらして同じように動く体が後ろに見える。ベリーダンサーのように滑らかな腕の動きが千手観音を彷彿とさせる。がんばっていきまっしょい。サイコガンを胴体に向けて撃つ。TBSのシンボルマーク状に穴が開き頭上の円盤が百姓達の残骸を吸い上げて行った。某氏は伸び続ける粘土の髪の毛を指差して曰く「これはカツラではない?」。その後円盤は外務省へ移管され、速やかにアパートは更地となった。今の神戸空港である。

(了)

艶め竹


特殊な文章を11本収録。
「蜘蛛」「教育」「未解決」「電流」「太陽」「新宿」「大衆」「独裁」「深海」「家具」「広告塔」
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→艶め竹

  抜粋作品:蜘蛛

   電話機を押す。ピー。「私だが」。机の引出しを密かに開けると、ミミズが1匹箱の中。太くて長いうねうねを見ながらほくそえむ。私の抵抗。ノックトントン。私は引出しを閉めて取り繕う。「入りたまえ」。秘書の話を聞きながら、真面目な顔で頷くが、今この瞬間も引出しの中にはミミズがいるのだ。美しいたった1人の反乱。レコードに針を落とす。三木谷浩史の笑い声が響き渡る。スライム考えた奴は、あれが流行ると思って作ったんだろうか。大東京を眺めつつ考えにふける。ゴミ箱にゲル状のどろどろを入れて売る。掌ポンしたんですか。パワーポイントで説明したんスか。窓ガラスをぎざぎざしたタイヤ状のゴムが粘着力でゆっくり落ちて来る。忍者もいる。歴史の教科書でいつ忍者出て来るんだろうと思ってたよ。引出しを開ける。ミミズがいない。いよいよ明治大学から本当に革命が起こる。夢にまで見た決起集会。僕は死にましぇん。ミミズが叫ぶ。ミミズ轢かれる。風呂敷を掴んだ男が落下して来る。ミミズと並んで潰れる。カモメのジョナサンになる、そう言ってました。多分カモメのジョナサン読んでないんだと思います。そうだよねえ。輪廻転生の中の1つくらいは潰れたミミズになるものさ。大草原で馬を見ながらつぶやいた。私は遠くを眺める。巨大なビル群が見える。かつて私もそこにいた。ターザンのように窓ガラスを叩き割り入って来た仮想現実の住人からロープを奪いここにいる。マネーロンダリングやテッキーラなどと叫んだことを思い出す。しかしもうそんなことはどうでもいい。夕暮れだ。巨大なフォークを手に取って、スパゲティの山を作って行く。スパゲティのシルエット群。これこそが生きる喜びというものだ。

(了)

ウッド宮


特殊な文章を11本収録。
「火山」「中東」「九月」「添水」「回転」「ラム」「早朝」「印刷」「少数」「音頭」「容器」
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→ウッド宮

  抜粋作品:火山

   デーモン小暮の笑い声で目覚める。脱いだハイヒールをつまみながら浜辺を走る。3歩進んで2歩下がる戦略。ウイダーinゼリー飲んでは戻し飲んでは戻す。足跡付けながらオフィスに到着。臭うウイダーinゼリー置く。入社以来同じウイダーinゼリー。窓拭きゴンドラ。清掃業者に非ず。デーモン小暮。がに股中腰中指ベロ厚い窓ガラスで笑い声届かず。テロップ。デーモン小暮さん(10万45歳)。「給付されてからの方が長いんだよ」。年金ギャグ。膝を叩く。社保庁叩く。プォン。面白い音。ブゥオン。これも。ボム!ゲラゲラゲラ。ボム!お風呂で。ボム!課長イスから浮かぶ。一瞬。ウイダーinゼリーの臭い相殺。それでも係長やって来て「それは牛の胃袋を持って来ているのと同じことなのだよ」。コノヤロー本当に牛の胃袋持って来てやろうかコノヤロー。つまらないものですがと言われてつまらないものですねと言うのかオマエハー。フンッ。フッ。フンガー。コンチクショー。オフィス課長係長ハケンアルバイト一切合財絵巻物鳥獣戯画風変換うらみつらみ草書体で綴り巻物後頭部ゆるりゆるりと流れPCシュレッダータイムカード微動だにせず。窓拭きゴンドラ往復今度は下から昇って来てがに股中腰中指ベロデーモン小暮の笑い声厚い窓ガラスで届かずPCシュレッダータイムカード動かざること山の如し。

(了)

暖簾叫


特殊な文章を11本収録。
「治安」「ねじ」「タワー」「大使館」「疑惑」「胡椒」「現物」「皮膜」「ロバ」「国体」「水質」
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→暖簾叫

  抜粋作品:治安

   初めてのインターネット。クリック。「不正な処理を行いました」。「不正」。発汗。ウーウーウー。パトランプ。タイヤのない車が止まる。ヘルメットにはNP。予知能力の子供が騒ぎを丘の上から眺める。リアルちんぽ95リアルちんぽ98リアルちんぽVISTA。自作シェルターに住む家族。うららかな午後を敵に回して365日戦闘状態。Tシャツ短パンの鳩山邦夫が蝶々を追い掛け回している。邦夫の舞。日本の伝統邦夫の舞。イスラエルからやって来たレーザー砲が邦夫を迎撃。ぐにゃりと変形する邦夫、鏡の正八面体と化す。跳ね返るレーザー光線が地面を貫きシェルターを焼く。所詮自作。そこでお饅頭家族がプスプス焦げながら無言の訴えを繰り返す。俺のつぶあんのぉ。俺のこしあんのぉ。俺のしろあんのぉ。冠のぉ。鏡の正八面体となった邦夫は晴天の空を上昇して行きNSAの元へ向かう。秘密のぉ。施設のぉ。「こいつ公安だよ!」予知能力の子供が叫ぶとNPのヘルメットが現れ「公安のぉぉ」鏡の正八面体はぐにゃりと変形、マウスポインタと化す。左クリックで予知能力の子供をゴミ箱へ移動。これこそ本物のシェルター。白い空間にソファとベッド屹立するゼウス像。ヤヤヤヤヤヤとびきりの御馳走。今ここで警視庁公安部外事第4課西洋骨董洋菓子饅頭担当の全貌が暴かれるのだった。

(了)

アボカド宴


特殊な文章を11本収録。
「キセル」「機械」「極道」「リング」「集合」「指輪」「電飾」「葉巻」「黄色」「浪速」「ブギウギ」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→アボカド宴

  抜粋作品:キセル

   破竹の快進撃も飛ぶ鳥を落とす勢いもアロンアルファで止めて見せる金鳥の夏素材次第で無敵のアロンアルファも歯が立たないレモン7個分のビタミンCに似たトリック。今日は水曜日毎週水曜日はカルチャースクール。セルビア人にナイフの使い方学び午後はりんごを剥く。裸のりんご並べて行く一心不乱に包丁を滑らす。セルビア人思い出す。包丁に重なるセルビア人いつの間にか自分の手からナイフ奪い取ってたセルビア人。ルームミラー越しの密談チラ見程度に包丁に重なる。ハラショーはロシア人。りんごロードを神秘主義者達がやって来るフラワーピープルやって来るパオパオチャンネル今むかし。広末浄化のミロシェビッチを取り囲んで訴えて戦争広告代理店なんだから強ち遠くもないじゃない。猫殺しエッセイに盛り上がっちゃって昔は17歳が訴えていたことなんだもはやしゃべり場はここまで来ているんだしゃべり場みたいな民放各社の番組でけだし嘘と真を亀田みたいに食い散らかしてガラスの十代彼らの心は壊れやすい自動改札と同じくらい壊れやすい。

(了)

バナナ儀


特殊な文章を11本収録。
「仕事」「アロマ」「キングメーカー」「名美と村木」「モーニングスター」「マンモス」「水晶」「自由の女神」「戦時下」「新世紀」「秋日和」
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→バナナ儀

  抜粋作品:仕事

  隕石の落下地点では茸のようなものがにょきにょきと生えていた。そのうちのいくつかは零細企業であり、3人のOLが始めた食器屋なども含まれていた。彼女達の会社、「カウチポテトパパ」の食器デザインは主に、女子供を叩き斬る織田信長、切腹をする白虎隊、弓矢を浴びる天草四郎、レスリングにいそしむ村田晃嗣といった通好みのもので、一般に「グロかっこいい」と呼ばれ大変ヒットした。会社が大きくなるにつれて人員を必要とする為、雇用市場における鶴田真由と松下由樹と雛形あきこを事実上独占する恰好となり、同時に宮沢りえ、牧瀬里穂、観月ありさの3Mの需要が上昇した。宇野総理はこれはまさにぶっとびぃな事態であると声明を出し、国家総力をあげてガッチャマンのようなサングラスをかけた女を歌姫として世に送り出したのである。時代はまさに混乱の世紀末であり、新たなエリートが必要とされていた。そこで日本が沈没しそうな勢いで、菊川怜、高田万由子、六條華という選りすぐりの頭脳が集められ、上岡龍太郎をホスト役に活発な議論が行われた。結論としてやはり例の隕石を調べた方がいいのではということになり一同は長いお玉のような金属をガーガー言わせながら落下地点に赴いたのである。4次元怪獣ブルトンを彷彿とさせるごつごつとした塊は驚くことに言葉を発した。内容はフリテン君を朗読したものだった。プライドを傷つけられた菊川怜は開き直ることで東大ブランドからイヤミとなりかねない要素を蒸発させ、タレントキャラクターとして有効活用し、六條華はうろ覚えのぶつ切り単語でようやくグーグルで発見する程度の存在にとどまり、高田万由子は結婚によりいつのまにかハイソキャラへの1本化を成し遂げ東大を違和感なく自然消化してしまったのだ。これらの攻撃によりいとも簡単に隕石は爆発して散り散りになった。やがて数千年経ち人類が滅亡した世界で、海辺を破片の1つが転がっている。そこに孵化したばかりの平沢勝栄がひゅるひゅると近寄り、新たな文明が始まりつつあった。

(了)

2014年1月12日日曜日

縛り煙


特殊な文章を11本収録。
「思ひ出」「トーチカ」「行列」「調査室」「横浜」「輝夫」「哀歌」「秘密」「絶唱」「夕焼け」「にわか雨」
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→縛り煙

  抜粋作品:思ひ出

  修学旅行では皆でガレー船を漕いだ。ローマ人。山下君は朽ち果てて死んだ。ドラクエ返さなくて済んだ。地元の漁師はイルカを叩いている原光景。民度低。あの日あの時、あの桜の木の下で微笑む高橋マリ子の記憶に重なるハイカラと黒光りしたランドセル。そうよ文化住宅と白黒写真の軍艦島をしたためながら皆が皆マント姿で高利貸しの背徳だった。全てを錆びた5円玉から覗いてた。昭和平成を生き抜く5円玉。1度も見たことのないたけのこが山の中で突き出している姿を自分のことのように懐かしい。知床からの絵葉書と背中を覆うカーデガン。玉虫色の元になる林の中で見つけたああこれが玉虫か、そのこととサラリーマンとからみつく、ああこれがスナックとホステスか、結びつき、久しぶりに浅香唯を見た時の、ああいたな浅香唯の語感も呼び覚ます。

(了)

風船工場


掌編小説を11本収録。
「大きな帽子の女」「アドバルーン」「放射能」「水滴」「壜」「猛禽類」「象」「カブトムシ」「死体画像」「風船工場」「電気くらげ」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→風船工場


  抜粋作品:大きな帽子の女 


わたしは世界中を旅してきたのです。


その女は言った。
女は巨大な帽子をかぶり、いつも駅前に立っていた。
女の顔には痣があった。顔のおでこから右目のあたりまで赤く広がっていた。


わたしは砂漠を通り、飛行機に乗り、ハイウェイを飛ばし、海を渡りいろいろなところにゆきました。


女が何者なのか、私の仲間内でも話題になっていた。毎日あの変な帽子の女は何をしているんだろう。誰かを待っているのだろうか。


旅の間、いろいろな人達と出会いました。悪い人もいたし、素敵な人もいました。


あの帽子には見覚えがあると年嵩の一人が言い出す。子供のころ、近所に住んでいた女の子がかぶっていたのに似ているのだという。


わたしは出会った人々のおかげでいろいろなことを学びました。この世界のことや、生きることについて…。


年嵩の一人はその女の子と友達だったわけではない。一緒に遊んだこともなくて、たまに見かけるだけだった。見かけるときは必ず大きな帽子をかぶっていたので印象に残っていたのだという。


いいことばかりではなくて旅先では怖い目にも遭いました。外国には危ないところが多いから。


あの女の子は仲間に入ろうとしなかった。年嵩の仲間は思い出す。おもしろい帽子だね。話しかけても逃げるだけだった。逃げられれば興味がわく。女の子はどうやら少し離れたアパートに住んでいるようだった。


わたしは怖ろしい男達に連れ去られ監禁されたのです。男達は薄暗い部屋にわたしを閉じ込め、両手を縛って逃げられないようにしました。


年嵩の仲間は一度女の子の部屋のドアから聞き耳を立てたことがあるらしい。泣き声や怒鳴り声や叩く音が聞こえてきて、怖くなり、その後近づかなかったという。


でもわたしは上手く逃げることができました。男は酒を飲んだまま眠ってしまい、消し忘れたタバコが室内に引火したのです。それで消防車が駆けつけ、わたしは救い出されました。


それからしばらくして、そのアパートで火事が起きた。年嵩の仲間は続ける。放火という噂もあったが結局誰かが捕まるようなことはなかった。帽子の女の子は施設に連れてゆかれたという話を聞いてそれきりだった。


わたしは幸運でした。神様の思し召しだと思いました。監禁した男は逃げ遅れて焼け死んでしまいました。少し可哀相だと思います。わたしはそんなにひどいことをされたわけではないのに。でもこれも運命なのです。神様の思し召しなのです。でもそんなにひどいことをされたわけではないんです…。


いろいろ話した挙句、結局私が大きな帽子の女に声をかけることになった。ストレートにいつも何をしているんですか、と声をかけると帽子の女は嬉しそうな表情を作り、口を開いた。女は世界中を旅していて、たまたま故郷に帰ってきたので、少しぶらぶらしているのだという。もっと話を、と私は近くの喫茶店に誘い、女の話をこうして聞いている。


喫茶店の中でも女は帽子を脱ぐことをしなかった。女の顔の上で赤い痣の地帯が表情につられて揺れる。火事の話をしても女は自分の痣のことには触れなかった。私もそのときのやけどですか、とは聞かない。


帽子の女は自分の見た世界の話をまだ続けている。私はほとんど聞いていない。ただ、じっと女の赤い痣を見つめている。

おでこから右目のあたりまで広がったその赤い地帯は世界のどこかを示す地図のように見える。

(了)