2014年1月13日月曜日

艶め竹


特殊な文章を11本収録。
「蜘蛛」「教育」「未解決」「電流」「太陽」「新宿」「大衆」「独裁」「深海」「家具」「広告塔」
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→艶め竹

  抜粋作品:蜘蛛

   電話機を押す。ピー。「私だが」。机の引出しを密かに開けると、ミミズが1匹箱の中。太くて長いうねうねを見ながらほくそえむ。私の抵抗。ノックトントン。私は引出しを閉めて取り繕う。「入りたまえ」。秘書の話を聞きながら、真面目な顔で頷くが、今この瞬間も引出しの中にはミミズがいるのだ。美しいたった1人の反乱。レコードに針を落とす。三木谷浩史の笑い声が響き渡る。スライム考えた奴は、あれが流行ると思って作ったんだろうか。大東京を眺めつつ考えにふける。ゴミ箱にゲル状のどろどろを入れて売る。掌ポンしたんですか。パワーポイントで説明したんスか。窓ガラスをぎざぎざしたタイヤ状のゴムが粘着力でゆっくり落ちて来る。忍者もいる。歴史の教科書でいつ忍者出て来るんだろうと思ってたよ。引出しを開ける。ミミズがいない。いよいよ明治大学から本当に革命が起こる。夢にまで見た決起集会。僕は死にましぇん。ミミズが叫ぶ。ミミズ轢かれる。風呂敷を掴んだ男が落下して来る。ミミズと並んで潰れる。カモメのジョナサンになる、そう言ってました。多分カモメのジョナサン読んでないんだと思います。そうだよねえ。輪廻転生の中の1つくらいは潰れたミミズになるものさ。大草原で馬を見ながらつぶやいた。私は遠くを眺める。巨大なビル群が見える。かつて私もそこにいた。ターザンのように窓ガラスを叩き割り入って来た仮想現実の住人からロープを奪いここにいる。マネーロンダリングやテッキーラなどと叫んだことを思い出す。しかしもうそんなことはどうでもいい。夕暮れだ。巨大なフォークを手に取って、スパゲティの山を作って行く。スパゲティのシルエット群。これこそが生きる喜びというものだ。

(了)