2014年1月13日月曜日

板々飛


特殊な文章を11本収録。
「圏外」「発電」「眼鏡」「カメラ」「夢」「沼」「シンセサイザー」「教会」「タンク」「モンスター」「頂点」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→板々飛

  抜粋作品:圏外

   君は誤解している。ポルノタワーの住人だからといって皆が皆助平なわけじゃないんだよ。陰毛で作った毛筆で愛国を謳ってこそ国辱的富国強兵は完遂される。窓口で申込書にポルノタワーと書くのが嫌だから、掘っ建て小屋に住んでいる。ブリーフパンツを頭から被って銀行強盗したけれど、そのまま暮らしていたのですぐに御用。桂文珍の自家用飛行機がポルノタワーに激突する。今頃桂文珍は天国の楽園で芸者と宴会だ。思えば落語家になった頃からの遠大な計画であった。テロリズムの豪速球は遥か彼方から投げられるため気づくものはほとんどいない。クローン培養された若き桂文珍達が次々と空母に特攻してゆき戦場の塵となってゆく。涙涙涙なしには語れない。鍋の蓋を開けると無数のジャガイモがグツグツ煮えている。それを眺めていると忘れていたリンチの記憶が甦ってくる。ジャガイモに重なる暴力の場面。殴り蹴られ糞を食わされ、グツグツジャガイモが煮える。蓋というものは危険だ。蓋を開けてはいけない。路上に蓋を置いておいたら誰も開けることなく時が経ち、置いた当人も開けるのが怖くなっていた。やがて一人の猛者が蓋を開けるとそこでは小人が町を作っていた。独自の通貨を発行し、核融合でエネルギーを生み出しており、ホログラムのバニーガールがビルの上で尻を振っていた。そしてさらに1000年後、彼等は高度に精神的な存在と化しており、あらゆる問題を克服していた。その頃ようやく冷凍睡眠から目覚めた男は「不完全な存在」と呼ばれ、研究の対象となっていた。「不完全な存在」の脳からは歴史的に価値ある情報が大量に採取された。スプーンに手足のついたような姿形の高度に精神的な者達は「不完全な存在」の脳内映像をテレパシーで共有する。機能的な研究室でポルノタワーに激突する間際の桂文珍の恍惚とした表情が静かに像を結び、忘却された暴力の世紀が思念の中で息を吹き返すのだった。

(了)