2014年1月13日月曜日

積楼閣


特殊な文章を11本収録。
「廃棄」「格言」「自動」「ラクロス」「入金」「物体」「くノ一」「割引」「フィルム」「クッション」「衰退」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→積楼閣

  抜粋作品:廃棄

   ひょろひょろとしたコンドルがシメジをくわえて飛んでゆく。情けない音楽がラジカセから流れるのを頬のこけた短足が膝を抱えて聴いている。カイワレばかりが生え揃い、砂漠にモヤシの蜃気楼。オタクが神経質な痙攣踊りを繰り広げ、AKBの裾野で握手の両手が虚空を泳ぐ。プロバイダーに怒りの矛先を全て向け、キッチンドランカーのハードボイルドに派遣のバイトが貧乏揺すりで立ち向かう。ああ、蛇の抜け殻を集めては、ああ、蝉の抜け殻を集めては、拒食症が身にまとう。痩身の住所不定に首を締められた白鳥が、限界集落ではたを織る。バーコードのようなリストカットのメッセージは己を資本主義社会の商品に過ぎないのだと言い聞かせ、ポンコツ潜水艦が日本列島に忍び寄る。スクランブル交差点の真ん中で薄らハゲがそよそよと、年老いたオカマが強風に飛ばされて、109に引っかかる。インテリが肉体労働者の怒声にヒイイッと両手で頭を庇い、鍛えあげられているにせよ体育教師の身体には野生の魅力がまるでない。背広とコートを掛ける為のハンガーでしかないうだつの上がらなさを引きずって、地獄への道は糸屑で舗装されている。ルンバの上に片手片足のもげたリカちゃん人形を据え付けて、コンビニ袋の横たわるワンルームの回遊は、ここで死ぬにはもってこいと思わせる。明後日の方向に頭部の曲がったリカちゃん人形は常に天井を凝視しながら表情を変えず、現代という閉域でこのような舞踏が催されているのだ。ボロボロに折れた傘を差して夢の島まで歩いてゆこう。嗅覚だけで動物愛護センターに辿り着き、汚れた犬を抱き抱え、東京湾に入水する。

(了)