2014年1月13日月曜日

薔薇炉


特殊な文章を11本収録。
「更新」「改革」「攻撃」「南極」「啓発」「大人」「蝉」「鬱」「ケータイ」「白金」「前近代」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→薔薇炉

  抜粋作品:更新

   子供達の目の前で鶏を絞め殺していると、和服姿の白人がやって来たようだ。気付かず鶏を絞め殺すのを続けた。「ほい、こりゃ」。原体験。ワシも蛙の解剖で目覚めたクチですから、クックックッ。白人は吹き矢の筒を咥えている。「なんぞ」。ワシはようやくアングロサクソンの気配に反応する。「それは人権侵害ではないか」「そんなことが公然と行われていて良いのか」「むざむざ見過ごすとはジャーナリズムとは言えない」。真剣白刃取りなんて未だかつて行われたとは思えんね。そやさかいワシはクイっとコップの水を飲み干して「土人にそんな理屈通用すると思っているのかね。誹謗中傷が栄養分さかいに」こう返してやったわけだ。白人はプっと吹き矢を放った。矢というよりも小さなジャイアント馬場でありワシの所まで飛んで来たかと思うと「プッ」と耳打ちして落ちて行った。海草まみれの少女がバケツを持って現れ白人の横を通り過ぎて行く。バケツの中には奇病を患った巨大なランチュウがおり、肥大化した頭部は反社会的な妄想を繰り返しているのである。海草まみれの少女は瞳に鈍い光をたたえながら、いずれこのランチュウは川に流すつもりなのだと言う。白人は生粋の日本人であることが発覚した。「堀江貴文というのは、極めて特殊な人格だが、同時に彼は普遍的な存在である」「あの冷淡さや酷薄で浅薄な人格はまさに人間の本質ですよ」。生粋の日本人は白人の振りをしながらやがて権力を握り1万円札は堀江の顔になった。ワシは子供達と共にランチュウを食べてしまい、それを知った海草まみれの少女は柿の木で首を吊った。海の向こうには中国大陸があるのだった。

(了)